イノベーションを生み出す風土づくりまでの道のり — 一過性のイベントで終わらせないために

近年、組織開発におけるテーマの一つとして「イノベーティブな風土づくり」というキーワードがあります。

国家施策においても成長戦略やイノベーション投資が掲げられるように、国家レベルで謳われると同時に、企業においても中期経営計画にイノベーション戦略が明確に掲げられることが増えてきました。事業戦略からの流れで組織開発は行われるので、「イノベーション」という軸で組織開発や風土づくりという方向性で動くのは必然と言えます。

一方で、本当に「イノベーティブな風土づくり」に向けた施策が打たれているかというと、まだ道半ばと言わざるを得ない状況です。

 

「きっかけ」止まりになっていないか

「アイデアワークショップ」「アイデア公募制度」「心理的安全性のある職場づくり」 — こうした施策は、創造性を育む方法と場づくりとして有効なアプローチです。しかし、それらの多くは「イノベーションのきっかけ」止まりになっているように見受けられます。

結果、イノベーティブな風土づくりはおろか、一過性のイベントレベルで終わってしまうケースも散見されます。問題は「きっかけの先」、つまり風土(カルチャー)という出口までのステップが描かれていないことです。

風土(カルチャー)は方針とは違います。何かを掲げたからカルチャーになるわけではありません。バリューや行動指針を策定することで価値観を可視化することはできますが、それだけではカルチャーとして根付かない。大切なのは、その中身が日常の行動に落ちているかどうかです。

カルチャーとはいわば、日常の行動における意思決定の集合体とも言えます。「こういう行動は私がすべき行動だ」「こういう行動はしてはいけない行動だ」 — そういった一人ひとりの判断の積み重ねが、組織の風土として根付いていきます。

 

イノベーションのカルチャーが作れない、本当の理由

ここで問題が起きます。通常の仕事において成果につながる行動は、多くの人がイメージできる身近なものです。ところが、イノベーション自体はほとんどの人が経験していません。だから、何が正しい行動で、何が正しくない行動かが分からない。もちろん上長も含め、です。

カルチャーを作るためには、自社で成果を出すための「正しい行動の積み重ね」が必要です。しかし、そもそもイノベーションにおける「正しい行動」が何かを知っている人が社内にいない。当然、自社における「正しい行動」まで辿り着きません。これがイノベーションのカルチャーづくりが難しい、最も根本的な理由です。

ですので、まずやらなくてはいけないことは、自社においてイノベーションの成果を出すことです。

ただ、これを実行するのは簡単ではありません。

例えば、イノベーションを起こすために「市場の声を聞く」という行動が求められます。これは顧客の課題を解像度高く捉えるために必要なことですが、顧客に見せる製品・サービスもない中で、単なる御用聞きにならないように想定顧客にヒアリングするのはハードルの高いことです。多くの人はいつも通り「お困りごとはないですか?」と聞いてしまいます。

ビジネスを生み出す過程においては、それ以外にも日常業務とは異なる多くの壁にぶつかりながら、一つひとつ突破していきます。

 

実践知の積み重ねが、風土へのインプットになる

それでも、その一つひとつの悩みとそれを突破していった判断や行動の積み重ねが、最終的にイノベーティブな風土へのインプットになっていきます。

一人の人がビジネス創出に取り組む。そこで得た知見を他のメンバーに共有しながら、複数の人の行動につながり、また行動や知見が磨かれる。この繰り返しの先に、風土が見えてきます。社員たちの実践知・体験知、そしてそれを組織に展開させた先に、カルチャーが生まれてくるのです。

 

もう一つのアプローチ — 現業への落とし込み

全員が本格的なビジネス開発を行った先にしか風土づくりの道はないのかというと、そんなことはありません。

イノベーションの土台づくりのため多くの社員たちの創造性を育むことも必要です。ただしワークショップの場や研修の場で身についたとしても現業に戻った時には環境の違いから、忘却の彼方になってしまいがちです。これでは「育む」までには至りません。

日常業務において「斬新なアイデア」が求められるケースは多くありません。しかし、創造性を育む上でも重要な「人への深い理解」を実現するための「質問力」や「観察力」といったものは、日常業務でも不可欠なスキルです。スキルをアイデア出しの場だけで終わらせず、日常業務での活用まで視野に入れて施策を打ち、浸透させていく。

この「日常業務に落とし込む」というアプローチは、これまでも取り組んできた風土づくり施策と近い感覚で想像しやすいのではないでしょうか。

 

iBRIDGEが関わること

iBRIDGEでは、こうした取り組みを二つの方向から支援しています。

一つは、イノベーションコーチングです。ビジネス開発を行うための実践的な考え方ややり方をレクチャーした上で、成功を作るまでの道のりを伴走します。うまくいかない時に「これは失敗ではなく、普通の結果だ」と伝えながら、本人が自覚していない成果を言語化して届ける。その積み重ねが、組織のカルチャーへのインプットになっていきます。

もう一つは、人への深い理解を促進する研修です。質問力や観察力を上げるためのポイントを伝え、それをアイデア出しの場だけでなく日常業務への活用まで見据えて浸透させていく。現業に落とし込むことで、創造性を育む土台を組織全体に広げていきます。

 

おわりに

きっかけを作ることと、カルチャーを作ることは、別の話です。ワークショップやイベントで機運を高めることには意味があります。しかし、その先に「実践知の積み重ね」と「日常業務への浸透」というステップを設計できているかどうかが、風土づくりの成否を分けると感じています。

きっかけの先に何を設計するか。その問いを持つことから、イノベーティブな風土への道が開けてくるのではないでしょうか。

 

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