「部下に考えさせる」前に、マネージャーが忘れていること

答えがないのに、部下に答えを求めている

新規ビジネスの企画、新しい事業の立ち上げ——こういったプロジェクトの現場で、こんな光景をよく目にします。

マネージャーが部下に「自分で考えろ」「提案してみろ」と言う。しかし部下は動けない。何度やっても前に進まない。そのうちマネージャーは「うちのメンバーは自律性が低い」「提案力がない」と嘆き始める。
でも、立ち止まって考えてほしいことがあります。

そのプロジェクト、マネージャー自身は答えを持っていますか?

やってみなければ分からない。正解がない。そういう性質のプロジェクトなのに、部下にだけ「考えろ」と求めている。これが現場の停滞を生む構造的な原因の一つです。

 

「育成」が「丸投げ」になっていないか

部下の自律性を高めたい、提案力を育てたい——この意図自体は正しいです。

ただ、その手段として「部下に任せる」「部下に考えさせる」を選ぶ時、マネージャー自身がプレイヤーとしての現場感を失っていると、それは育成ではなく丸投げになります。

答えを持っていないマネージャーに相談しても、返ってくるのは「こうしてみたら」という、外れてはないけど芯を食わないアドバイスだけです。部下はそのアドバイスを聞いても、腹落ちしない。もしくは藁をも掴む思いで動いても効果が出ないという状況に陥り、結局、全体が停滞したまま時間だけが過ぎていきます。

 

「一緒にやる」マネージャーと「助言だけする」マネージャーの違い

現場を見ていると、停滞を打破できるマネージャーと打破できないマネージャーの間には、明確な違いがあります。

打破できないマネージャーは、自分の経験や知識から答えを出そうとします。ただ、過去の経験や知識とは異なる状況の問いに対して答えを出そうとするので、どうしても芯を食わない助言になる。

打破できるマネージャーは「何が難しいか」を注意深く聞きます。そして、メンバーが動けるための具体的なアクションを一緒に考えます。答えを持っていないことを隠さず、「自分も分からないから一緒に考えよう」というスタンスで関わります。

この違いは、能力の差ではありません。「一緒にやる覚悟があるかどうか」の差です。

 

現場に戻ることが、突破口になった

あるプロジェクトで、停滞が続いていたチームに変化が起きました。きっかけはシンプルでした。マネージャーがメンバーと一緒に現場に行き、同じ目線で考え始めたのです。

「マネージャーとして指示する」から「チームの一員として一緒に考える」へ。このマインドセットの転換が、メンバーの動きを変えました。
誰かが答えを持っているわけではない。だから一緒に考えるしかない——この共通認識が生まれた時、チームは動き始めます。

 

マネージャーへの問い

部下の自律性や提案力が育っていないと感じているなら、一度この問いに向き合ってみてください。

「自分はそのプロジェクトに、一緒に考えるプレイヤーとして関わっているか?」

「部下に求めていることを、自分も一緒にやっているか?」

「育てる」と「一緒にやる」は矛盾しません。むしろ、一緒にやる中でしか育たないことがあります。

 

おわりに

マネジメントとプレイヤーの両立は難しいです。ただ、答えのないプロジェクトに向き合う時だけは、マネージャーもプレイヤーに戻る必要があると、現場を見ながら感じています。そのためには日頃から、時々で良いので自分がプレイヤーになる時間を意識的に設けてみることをお勧めします。

 

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