これからという時に辞めていく若手 — WILL・CAN・MUSTの再定義、できていますか

突然聞かされる若手の離職 — 人事担当者の苦悩

新入社員から研修を行い、時には相談に乗り、現場に配属された後に頑張っているとの話も聞いていた。そんな時に突然聞かされる離職希望の事実。

「思ったより仕事が合わなかった」「成長を感じられなかった」「将来のイメージが持てなかった」——離職理由を聞くと、言葉は出てくる。またか……。

エンゲージメントサーベイを取っている。研修も充実させてきた。現場では1on1も増やした。フォローアップも推進してくれてはいるが、それでも辞めてしまう。理由はいつも同じだ。

こんな相談を人事部の皆さまから受けます。

 

これらの問題を発生させている正体が、WILL・CAN・MUSTの「MUST」の定義にあるとしたら、どうでしょう。特定の施策の問題ではなく、キャリアを考える土台そのものがズレているとしたら——。

 

2種類のMUST

WILL・CAN・MUSTは、キャリアを考える上で広く使われるフレームワークです。自分のやりたいこと(WILL)、できること(CAN)、求められていること(MUST)を整理し、三つが重なる領域を見つけていく。多くのキャリア研修で採用されています。

このうち、MUSTをどう定義しているかを、改めて確認してみてください。

多くの研修では、MUSTを「会社からの役割期待」「業務上のやるべきこと」として教えます。組織の期待に応えることをMUSTの出発点とする考え方です。これは間違いではありません。ただ、MUSTにはもう一つの意味があります。それが市場・顧客起点のMUSTです。

会社起点のMUSTは、組織からの期待、業務上の役割、会社が定める行動指針。上司や人事が「今期あなたに期待していること」として語るときのMUSTです。

市場・顧客起点のMUSTは、自社が向き合っている市場のトレンド、顧客が本当に抱えているニーズ。会社の外側にある「社会からの要請」としてのMUSTで、事業の存在意義や顧客への価値提供と直結しています。

 

大企業では、市場・顧客起点のMUSTが見えにくい

成長過程のベンチャー企業と異なり、規模の大きな会社や顧客接点を持ちにくい部門では、市場・顧客起点のMUSTを日常的に感じにくくなります。分業が進んでいるため、自分の仕事が誰のどんな課題を解決しているのか、見えにくい構造になっているからです。

担当する業務の範囲は明確でも、その先にいる顧客の顔が見えない。会社の外側との接点が薄いまま、日々の業務をこなしていく。こうした環境では、仕事はどんどん「会社に言われたからやるもの」になっていきます。会社起点のMUSTに忠実であればあるほど、その枠の中に閉じていく。「成長実感がない」「意味を感じない」「管理職になりたくない」という言葉は、その必然的な結果です。

今の仕事の先に何があるのか——そこが見えなくなってくる。狭い視野の中で、悶々と過ごし、外の世界に可能性を見出そうとするのも分からなくはありません。

 

仕事を覚えてきた今こそ、MUSTを拡張する

新入社員の頃は、会社起点のMUSTを伝えることが重要です。まず業務を覚え、組織のルールを理解し、役割を果たす。その積み重ねが仕事の基盤になります。上司や先輩の期待に応えることを通じて、社会人としての土台が築かれていく。その意味で、会社起点のMUSTは正しい羅針盤です。

ただ、入社3〜4年目を過ぎると状況が変わります。業務は覚えてきた。指示された仕事はこなせる。でも、何かが足りない——。

このタイミングで、市場・顧客起点のMUSTを加えることで、就活の時よりも解像度高く、自分の会社や製品・サービスの価値を実感できます。さらに、数年間の仕事を通して見えてきた自分自身の能力をベースにやりたいことを再考すると、新たな成長の方向性が見えてきます。

若手社員のマインドセットを改めて整え、本来持っている主体性を取り戻すためにも、このような場を提供することは有効です。

 

おわりに

私が社会に出た頃は、ちょうどバブル崩壊のあとで大きな会社が倒産する時期でした。大手企業にいた私は「これは対岸の火事ではない」と感じました。これが、私自身のマインドセット変革のきっかけでもありました。

若手が主体的にキャリアを考え、主体的に行動できるようになるためにも、会社の外側を改めて考え、自分の今後を見つめ直すきっかけを与えてはいかがでしょうか?

 
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