新任マネージャーが見落としている、部下と向き合う時にすべき一つの問い

「あの人、正直能力的に厳しいんですよね」

マネージャーと話していると、部下についてこういう言葉を聞くことがあります。仕事の覚えが遅い、アウトプットの質が上がらない、指示しても動きが鈍い — そういった状況が続いていて、どう関わればいいか悩んでいる。

その悩みに向き合いながら、私は時としてこのようなことを聞きます。

「その人が本当にやりたいこと、聞いたことはありますか?」

たいていの場合、少し間があって「聞いたことはないですね」という答えが返ってきます。

 

仕事の話が中心になる、必然的な理由

マネージャーが部下と話す時間の多くは、仕事の進捗確認やスキル向上の話に使われます。「あの案件どう?」「この部分をもっと改善できないか」「次はこういうことを意識してみて」 — そういった会話が積み重なっていく。

これは間違いではありません。マネージャーの役割として、チームの成果を出すことは当然の責務です。特に新任マネージャーは、自分自身もプレイヤーとしての仕事を抱えながらマネジメントをしているケースが多い。目の前の仕事を回すことで精一杯になるのは、無理のないことです。

ただこの時、マネージャーの視点はメンバーの進捗も含め、自分が関わっている仕事をいかに進めていくかに当たっています。その結果、部下の意思(WILL)はあまり聞かれないまま、進んでいきます。

 

WILLを聞いた時、景色が変わった

ある部下育成研修の実践課題として、部下のWILLを聞くことをテーマに取り組んだマネージャーがいました。普段の1on1では全くしないような問いを、その場で初めて投げかけたそうです。

「能力が低いと思って、ずっとどうフォローするか悩んでいた部下がいたんです。でも本人がやりたいことを深掘りして聞いてみたら、そもそも今の仕事と本人が積み上げたいものが全然合っていないことがわかった。能力の話をする前に、もっと彼の考えていることを深く知る必要があると思いました。」

「どう育てるか」から「どう向き合うか」に。問いに変わった瞬間だったと思います。

 

別のマネージャーは、モチベーションが高く積極的に見えていた部下の話をしてくれました。傍から見ると意欲的なのに、どこかが空回りしている。そこでWILLを聞いてみると、キャリアについてほとんど具体的に考えられていないことがわかりました。本人は考えているつもりだったけれど、漠然としたイメージしかなかった。

単にやりたい仕事だけではなく、将来目指している人物像や、ここまでの具体的な振り返りをしていく中で、徐々に本人が目指したい方向性が見えてきたことで、今の仕事の意味、次にやりたい仕事も具体化されてきました。

「積極性」から「本気」への変化を感じられたそうです。

 

もう一人のマネージャーが話してくれたのは、どこか不安定に見えていた部下のことでした。仕事は前向きに取り組んではいるけれども、どことなくやらされ感を持っているように見える瞬間がある。WILLを聞いていくうちに、今の仕事が自分のキャリアにつながっているのかどうか、ずっと不安だったことがわかりました。

「今あなたがやっているこの仕事は、こういう意味でキャリアにつながっています」と伝えた時、その部下は「そういうことだったんですね」と、ほっとした顔をしたそうです。

 

このような実践を通して言えることは、マネージャーが「能力」「モチベーション」「パフォーマンス」という目線で見ていたものが、WILLを聞いた途端に全く違う景色になった、ということです。

 

「それって、やりたいこと?」という問い

入社前は数多く語られていた「この会社でやりたいこと」「将来なりたい姿」。仕事に追われる中で、それを聞く機会はどんどん減っていきます。

特別な面談の場を設ける必要はありません。普段の会話の中で「あなたは本当はどんな仕事をしていきたい?」と一度聞いてみるだけでいい。頑張りますという言葉と実際の行動が噛み合っていないと感じる時には「それって、あなたがやりたいことなの?」と聞いてみるのも良いでしょう。その一言が、部下との関係の質を変えることがあります。

 

おわりに

部下の能力、モチベーション、パフォーマンス — それらに悩んでいる時は、一度、その人が本当にやりたいことを聞いてみることをお勧めします

答えが返ってこないこともあります。「考えたことがなかった」という反応もあります。それでも、その問いを投げかけること自体が、マネージャーとして部下に向き合う姿勢を示すことになります。

「あなたのやりたいことを、私は知りたいと思っている」。 その一言が、関係を変えることがあるのではないでしょうか。

 

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